入植 Part.1

入植 Part.1
X-ファイル』のエピソード
話数シーズン2
第16話
監督ニック・マーク
脚本クリス・カーター
作品番号2X16
初放送日1995年2月10日
エピソード前次回
← 前回
新鮮な死体
次回 →
入植 Part.2
X-ファイル シーズン2
X-ファイルのエピソード一覧

入植 Part.1」(原題:Colony)は『X-ファイル』のシーズン2第16話で、1995年2月10日にFOXが初めて放送した。なお、本エピソードは「ミソロジー」に属するエピソードである。

スタッフ

キャスト

レギュラー

ゲスト

ストーリー

北極の野戦病院で、瀕死状態のモルダーは冷たい水の中に入れられていた。すぐ近くで、スカリーは「モルダーを助けるためにはこうするしかない」と医師たちに説明していた。そんな中、モルダーは心停止状態に陥る。

冒頭のシーンの2週間前、ボーフォート海にUFOらしき物体が墜落した。そのUFOに乗っていたバウンティハンターは生きており、地球での活動を開始した。2日後、バウンティハンターはペンシルベニア州スクラントンの中絶クリニックを訪れ、そこで働いていた医師を殺した。その殺害方法はとても奇妙なもので、首の後ろを謎の針で突き刺すというものであった。殺害後、ハンターはクリニックに火を放った。モルダーは匿名のEメールでその事件の存在を知った。スクラントンの医師のほかにもう2人が同様の手口で殺害されていた。不思議なことに、その3人の顔はまるで3つ子のようにそっくりだった。3人のうちの一人を脅迫していたプロライフ派の牧師からニューヨーク州のシラキュースにも3人と同じ顔をした医師がいるという情報を得る。その医者、アーロン・ベイカー医師を探し出すため、モルダーは新聞広告を出す。

モルダーは同僚のバレット・ワイス捜査官にベイカーの保護を依頼した。しかし、2人はバウンティハンターに殺されてしまった。バウンティハンターはワイス捜査官の姿に変身し、ベイカーの自宅にやって来たモルダーとスカリーに「ベイカー医師はここにはいないよ。」と告げた。ワイス捜査官の殉職を知ったスキナー副長官は捜査の打ち切りを決めた。 ところが、2人にCIAのエージェント、アンブローズ・チャペルが接触してきた。チャペルによると、殺された医者たちはソビエト連邦が作り出したクローン人間で、ロシアとアメリカの両政府がその粛清を行っているのだという。チャペルはジェームズ・ディケンズ医師もクローン人間の一人なので、保護すべきだと2人に言った。3人はディケンズ医師の元へ向かった。しかし、ディケンズ医師はチャペルの姿を見た途端に逃げ出してしまった。実は、チャペルはバウンティハンターが変身したものであった。しかし、チャペルの正体を知らないモルダーとスカリーは、チャペルの言ったことを信じてしまうのだった。

バウンティハンターはチャペルを殺害することに成功する。ここに至って、スカリーはチャペルに不信感を抱いた。しかし、モルダーはチャペルの話を信用すると言って聞かなかった。スカリーがワイスの死体を解剖したところ、彼の血液は凝固しており、赤血球数も異常なほど増加していることが判明する。また、スカリーはディケンズ医師の家で見つけたメモ書きに記されていた住所へ向かった。そこは研究所であった。チャペルはその研究所の存在を隠滅しようとしていたのである。その頃、モルダーは父親のウィリアムから妹のサマンサが帰って来たと聞き、実家を訪れる。サマンサは9歳ころの記憶がないままに今まで生きていたが、最近受けた催眠治療で自らがサマンサ・モルダーであることを思い出したのだという。

サマンサは「バウンティハンターとクローン人間は異星人なの。クローンを殺し次第、ハンターは私を捕まえにやってくるわ。」とモルダーに言う。その頃、スカリーはバウンティハンターから身を隠すためにホテルに向かった。しばらくしてからスカリーが研究所に戻ると、4体のクローン人間がそこにいた。彼らは「自分たちが最後の生き残りだ。」と言う。スカリーは4人の身柄を保護しようとしたが、バウンティハンターはそれに勘付いていた。ハンターはモルダーに変身してスカリーの部屋を訪れた。まもなく、スカリーの携帯電話に本物のモルダーから電話がかかって来た[1]

製作

当初、ウィリアム・モルダー役には、『事件記者コルチャック』で主演を務めたダーレン・マクギャヴィンが起用される予定だったが、マクギャヴィンのスケジュールの都合が合わず、ピーター・ドゥナットが代わりに起用された[2]

バウンティハンター役のブライアン・トンプソンはオーディションで選出された。プロデューサーのクリス・カーターとフランク・スポットニッツはバウンティハンターを後のエピソードでも登場させようと考えていたため、特に念入りに検討が行われた。スポットニッツはトンプソンの容貌が極めて特徴的である(特に顔と口)ことから、彼を起用するべきだとカーターに言ったという[3]。正式に出演が決まった後、製作スタッフはトンプソンのエージェントに「バウンティハンターは空軍のパイロットのような存在だ。だから、トンプソン氏には髪を短く整えてもらいたい。」と伝えた。しかし、手違いでそれがトンプソンに伝わらなかった。そのため、本エピソードにおけるバウンティハンターの髪型は当初のコンセプトから外れたものになってしまった[3]

カーターは本エピソードを「『X-ファイル』で展開される「ミソロジー」の内容を決定づけた作品だ。」と位置付けている。それに大きく貢献したのがドゥカヴニーであった。ドゥカヴニーはバウンティハンターとモルダーの妹、サマンサの成長した姿をシリーズに登場させてはどうかと提案したのである[4]。また、アイスピックのようなエイリアンの武器が発射されるシーンは、バウンティハンターを演じるトンプソンの腕に空気チューブをつけて撮影された。その発射時の音は、地球外の武器を思わせるような独特のものでなくてはならなかったため、試行錯誤が重ねられた。最終的に、プロデューサーのポール・ラブウィンがマイクロフォンに声を吹き込んだときに生じたノイズが採用された[5]

シーズン1第8話「氷」の段階で、カーターは北極を舞台にしたエピソードを作ろうとしていた。しかし、シーズン1制作時には、それができるだけの製作費と機材がなかった。 しかし、本エピソードの撮影に当たっては、カナダ海軍から退役済みマッケンジー級駆逐艦を使った撮影の許可が出た。それを使って、砕氷船のシーンを撮影することができたのである[6]

評価

1995年2月10日、FOXは本エピソードを初めてアメリカで放映し、1590万人の視聴者(980万世帯)を獲得した[7][8]

エンターテインメント・ウィークリー』は本エピソードにB+評価を下し、「揺れ動く信念とアイデンティティの網の目を解きほぐすには、しっかりと集中してこのエピソードを視聴しなければならない。それだけの集中力を費やす価値はある。」と評している[9]。『A.V.クラブ』のザック・ハンドルンは本エピソードにA評価を下し、「X-ファイルの完成形だ。」「シーズン2に至って、我々視聴者はサマンサの姿を見ることができた。しかし、そこで明かされる事実は衝撃的で、我々を動揺させるものだった。」「冒頭のフラッシュフォワードとコールドオープンはうまい見せ方だと思う。」と述べている[10]

ミシェル・ブッシュはその著書『Myth-X』で本エピソードで登場人物が抱えるモラル・ジレンマについて言及している。ブッシュは「表面だけを見れば、モルダーが真実を追い求めようとするのは正しい行いだといえる。しかし、モルダーの行為の結果は正義とは思えないものになっている。」「一般的に言って、一人の人間(ないしエイリアン)の生命を尊重すべきだというイデオロギーはうまく機能するものである。しかし、モルダーの信念は彼の生活の中でうまく機能しているとは言い難い。」と述べている[11]。また、本エピソードにおけるモルダーの描写が従来のジェンダー・ロールを反転させたものになっていると指摘する論文がある。「長年行方を追っていた愛しい妹が目の前に現れた時にモルダーが率直に感情を表現し、自分の弱さをさらけ出したのは女性的である」と主張する論文である[12]

参考文献

  • Bush, Michelle (2008). Myth-X. Lulu. ISBN 1-4357-4688-0 
  • Edwards, Ted (1996). X-Files Confidential. Little, Brown and Company. ISBN 0-316-21808-1 
  • Lavery, David; Hague, Angela; Cartwright, Marla (1996). Deny All Knowledge: Reading The X-Files. Syracuse University Press. ISBN 0-8156-2717-3 
  • Lovece, Frank (1996). The X-Files Declassified. Citadel Press. ISBN 0-8065-1745-X 
  • Lowry, Brian (1995). The Truth is Out There: The Official Guide to the X-Files. Harper Prism. ISBN 0-06-105330-9 

出典

  1. ^ Lowry, pp. 199–201
  2. ^ Lovece, p. 153
  3. ^ a b Frank Spotnitz (2005). Audio Commentary for "End Game". The X-Files Mythology, Volume 1 – Abduction (DVD) (FOX Home Entertainment).
  4. ^ Chris Carter (narrator) (1994–1995). Chris Carter Talks About Season 2: Colony. The X-Files: The Complete Second Season (featurette) (Fox).
  5. ^ Paul Rabwin, Brian Thompson (narrators) (1994–1995). Behind the Truth: Bounty Hunter. The X-Files: The Complete Second Season (featurette) (Fox).
  6. ^ Edwards, p. 115
  7. ^ Lowry, p. 249
  8. ^ http://anythingkiss.com/pi_feedback_challenge/Ratings/19941205-19950305_TVRatings.pdf
  9. ^ “The Ultimate Episode Guide, Season II”. 2015年10月22日閲覧。
  10. ^ “The X-Files: "Colony"/"End Game"/"Fearful Symmetry"”. 2015年10月22日閲覧。
  11. ^ Bush, p. 60
  12. ^ Lavery et al, p.107

外部リンク

シーズン
シーズン1
  • "序章"
  • "ディープ・スロート"
  • "スクィーズ"
  • "導管"
  • "ジャージー・デビル"
  • "影"
  • "機械の中のゴースト"
  • "氷"
  • "宇宙"
  • "堕ちた天使"
  • "イヴ"
  • "炎"
  • "海の彼方に"
  • "性を曲げるもの"
  • "ラザロ"
  • "再生"
  • "E.B.E"
  • "奇跡の人"
  • "変形"
  • "闇"
  • "続 スクィーズ"
  • "輪廻"
  • "ローランド"
  • "三角フラスコ<終章>"
  • シーズン2
    • "リトル・グリーン・マン"
    • "宿主"
    • "血液"
    • "不眠"
    • "昇天 Part.1"
    • "昇天 Part.2"
    • "トリニティ"
    • "昇天 Part.3"
    • "地底"
    • "レッド・ミュージアム"
    • "不老"
    • "オーブリー"
    • "フェチシズム"
    • "呪文"
    • "新鮮な死体"
    • "入植 Part.1"
    • "入植 Part.2"
    • "恐怖の均整"
    • "歪み"
    • "サーカス(英語版)"
    • "カルサリ(英語版)"
    • "幼虫(英語版)"
    • "影踏み(英語版)"
    • "カニバル(英語版)"
    • "アナサジ"
    シーズン3
    • "祈り"
    • "ペーパークリップ"
    • "D.P.O.(英語版)"
    • "休息(英語版)"
    • "名簿(英語版)"
    • "胃液(英語版)"
    • "歩兵(英語版)"
    • "土牢(英語版)"
    • "二世"
    • "731"
    • "黙示(英語版)"
    • "害虫(英語版)"
    • "(英語版)"
    • "グロテスク(英語版)"
    • "海底"
    • "アポクリファ"
    • "プッシャー(英語版)"
    • "骨董(英語版)"
    • "賭博(英語版)"
    • "執筆(英語版)"
    • "化身(英語版)"
    • "ビッグ・ブルー(英語版)"
    • "電波(英語版)"
    • "タリサ・クミ"
    シーズン4
    • "支配者"
    • "ホーム"
    • "メラニン(英語版)"
    • "アンルーヘ(英語版)"
    • "追憶(英語版)"
    • "整形(英語版)"
    • "紫煙"
    • "ツングースカ Part.1"
    • "ツングースカ Part.2"
    • "ペーパー・ハート(英語版)"
    • "カビ(英語版)"
    • "腫瘍(英語版)"
    • "タトゥー(英語版)"
    • "メメント・モリ"
    • "魂のない肉体(英語版)"
    • "P.O.W(英語版)"
    • "MAX Part.1"
    • "MAX Part.2"
    • "凍結(英語版)"
    • "スモール・ポテト(英語版)"
    • "ゼロ・サム"
    • "哀歌(英語版)"
    • "フラッシュバック(英語版)"
    • "ゲッセマネ"
    シーズン5
    • "帰還 Part.1/Part.2"
    • "アンユージュアルサスペクツ"
    • "迂回"
    • "プロメテウス(英語版)"
    • "クリスマス・キャロル"
    • "エミリー"
    • "狐狩り(英語版)"
    • "分裂(英語版)"
    • "ドール(英語版)"
    • "キル スウィッチ(英語版)"
    • "吸血(英語版)"
    • "ペイシェントX(英語版)"
    • "赤と黒(英語版)"
    • "旅人(英語版)"
    • "マインド・アイ(英語版)"
    • "万霊節(英語版)"
    • "アンダーカバー(英語版)"
    • "幻妖(英語版)"
    • "ジ・エンド(英語版)"
    シーズン6
    • "ビギニング(英語版)"
    • "迷走(英語版)"
    • "トライアングル(英語版)"
    • "ドリームランド Part.1/Part.2(英語版)"
    • "クリスマス・イブの過ごし方(英語版)"
    • "愛児(英語版)"
    • "レイン・キング(英語版)"
    • "S.R.819(英語版)"
    • "ティトノス(英語版)"
    • "ファイト・ザ・フューチャー Part.1(英語版)"
    • "ファイト・ザ・フューチャー Part.2(英語版)"
    • "アグア・マラ(英語版)"
    • "月曜の朝(英語版)"
    • "スイート・ホーム(英語版)"
    • "絶滅種(英語版)"
    • "電界(英語版)"
    • "ミラグロ(英語版)"
    • "アンナチュラル(英語版)"
    • "荒野の三人(英語版)"
    • "トリップ(英語版)"
    • "創世記(英語版)"
    シーズン7
    • "第六の絶滅 Part.1(英語版)"
    • "第六の絶滅 Part.2(英語版)"
    • "ハングリー(英語版)"
    • "ミレニアム(英語版)"
    • "ラッシュ(英語版)"
    • "ゴールドバーグ(英語版)"
    • "オリソン(英語版)"
    • "偉大なるマリーニ(英語版)"
    • "神のお告げ(英語版)"
    • "存在と時間 Part.1(英語版)"
    • "存在と時間 Part.2(英語版)"
    • "X-コップス(英語版)"
    • "ファースト・パーソン・シューター(英語版)"
    • "呪い(英語版)"
    • "(英語版)"
    • "キメーラ(英語版)"
    • "宿縁(英語版)"
    • "ブランドX(英語版)"
    • "ハリウッドA.D.(英語版)"
    • "ファイトクラブ(英語版)"
    • "三つの願い(英語版)"
    • "レクイエム(英語版)"
    シーズン8
    • "サーチ・フォー・モルダー Part.1(英語版)"
    • "サーチ・フォー・モルダー Part.2(英語版)"
    • "爪痕(英語版)"
    • "ロードランナー(英語版)"
    • "冥界の死者(英語版)"
    • "レッドラム(英語版)"
    • "第三の目(英語版)"
    • "透視(英語版)"
    • "救済(英語版)"
    • "バドラ(英語版)"
    • "ギフト(英語版)"
    • "メデューサ(英語版)"
    • "受胎(英語版)"
    • "デッドアライブ Part.1(英語版)"
    • "デッドアライブ Part.2(英語版)"
    • "パスワード(英語版)"
    • "秘密(英語版)
    • "到来(英語版)"
    • "孤立(英語版)"
    • "誕生 Part.1(英語版)"
    • "誕生 Part.2(英語版)"
    シーズン9
    • "リターン・トゥ・ウォーター Part1/Part2(英語版)"
    • "ダイモニカス(英語版)"
    • "4-D(英語版)"
    • "蠅の王(英語版)"
    • "トラスト・ノー・ワン(英語版)"
    • "ジョン・ドー(英語版)"
    • "境界(英語版)"
    • "神託 Part.1(英語版)"
    • "神託 Part.2(英語版)"
    • "オードリー(英語版)"
    • "化体(英語版)"
    • "数秘術"
    • "モンスター(英語版)"
    • "英雄に捧ぐ(英語版)"
    • "ウィリアム(英語版)"
    • "解放(英語版)"
    • "サンシャイン・デイズ(英語版)"
    • "真実 Part1/Part2(英語版)"
    シーズン10
    • "闘争 Part.1(英語版)"
    • "変異(英語版)"
    • "トカゲ男の憂鬱(英語版)"
    • "バンドエイド・ノーズ・マン(英語版)"
    • "バビロン(英語版)"
    • "闘争 Part.2(英語版)"
    シーズン11
    • "闘争 Part.3(英語版)"
    • "死後(英語版)"
    • "分身(英語版)"
    • "失われた記憶(英語版)"
    • "グーリー(英語版)"
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